コスモス姫路第120号 P13
「街中の小さき丘の中腹に夢の炎のごとく花咲く」大西恒祐
短歌の同人誌「コスモス姫路」では同人誌上に発表された短歌の評を同人同士が書くコーナーがあります。その評を書く役回りが時々まわってくるのですが、今回は上記の短歌の評を書くことになりました。
ます、評を書くため「コスモス姫路」120号を紐解き、次に119,118,117号を見ました。ここまででこの短歌の作者がどうやら「コスモス姫路」には初登場のようだと思い至りました。姫路在住ではない私は同人のお顔をほとんど知りません。歌会へも出席していないので同人誌以外には情報が限られるのです。
次に、詠草の言葉遣いから私よりはご高齢であろうかと推察しました。こうしてここ数日、私はコスモス姫路数冊を持ち歩き、通勤途上で作者の作以外の詠草にも接しながら、気になる語について考えをめぐらせ始めました。
気になるのは、「夢」と「炎(ほむら)」そして「花」です。
本日、久しぶりにゆっくり過ごせる時間があったので新聞の書評欄を見ていると、気になる単語が目に飛び込んできました。「夢」と「覚醒」です。書評に出ていた書名は「夢よりも深い覚醒へ」大澤真幸著。
この名前に見覚えがありました。この3月8日に読み終えた「量子の社会哲学」の著者です。
新聞の書評を読むと、夢から現実へ覚めるのではなく、もっと深く夢の底へ突き抜けるように覚醒するべし。と言う論旨がうかがえました。
ここで短歌に戻ると、「花」がただならぬものとして迫ってくるようです。あやしいぼんやりとした色合いながら人を誘うような危なさをうかがわせています。夢は、さめればよいというものではないようです。
夢の炎に誘われてその花のとりことなってしまう狂おしいような束の間のはかない、しかしとても大切な何かをつかみ損ねたような気分にさせられる。そんな感覚が生まれました。
そこで、短歌評を書きました。
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いつも通る道、犬を連れてゆっくり歩いていると見慣れた丘の斜面に花が咲いている。何気なく見た花に作者の目は惹きつけられた。花の形や色ははっきりしない。夢で見ているようで見ようとすると見えない。しかし目が離せない。
炎のように揺れて誘われ、とりこになりそうな、狂おしい束の間のはかない、しかしとても大切な何かがそこにあるように思える一瞬。しかし、やれやれ作者は連れていた犬に引っ張られて現実に連れ戻されたようです。
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206字。
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- 2012/04/29(日) 23:21:08|
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